これからムペンバ効果を実験する人へ
ムペンバ効果の実験において、検証したいポイントはいくつかあると思います。実験をする際は、その検証するポイント以外の要素を出来るだけ排除して、きちんと比較できる状態にすることが肝心。それをしないで結論を出してもあまり確かめたことになりません。
冷蔵庫が頑張っちゃう
昨今の冷蔵庫は、温度設定をすると、その温度を保つようにキープさせるし、強弱設定もしかり。となると、この効果を排除したい場合、同一の状態にある冷凍庫で実験すればよいのですから、「水とお湯を同時に入れる」必要がありますね。ただし、これだと「冷気噴出し口に近い方が早く凍る効果」を生じさせてしまう可能性がありますから、必ず場所を入れ替えた実験をする必要があります。
逆に「冷蔵庫が頑張っちゃう効果」であることを証明するためにはどうすれば良いかというと、家庭用冷蔵庫では上手く実験出来なさそうですね。
伝導率が違う
かたや耐熱、かたやそうではない容器に入れた場合の熱伝導効率が異なったり、開口部の径が違って冷気に接する量が違ったりしては意味がありません。必ず同じ容器に同じだけ入れてやりましょう。
同じだけ、ってのも実は難しいんですよね。蒸発して量が減った効果の可能性があります。入れた際の水の量で考えるのか、出来たときの氷の量で考えるのか、予めテーマとしての設定が必要です。
閾値はどこだ
閾値(しきいち)を考えるのも大事です。一口で「水」「お湯」といってもその温度は様々です。1℃でも高い方が早く凍る、という結果が出るなら問題はありませんが、どうも直感的にはそうではなさそうです。ということは、ここは変化させてみるのが一番。20℃の水と、40℃ぬるま湯、60℃お湯、80℃お湯とか。
実は容器(容量、開口部)もこの手のパラメーターになりがちです。あと水の量・冷蔵庫のパワー。全ての条件を試すのは難しいと思いますが、特に否定的な見解をもって実験する際はこのあたりに注意してください。番組で(あるいは論文で)「効果が起こった」とされたときの条件で成功しないと「効果がないことを証明した」ことにはなりません。もちろん、対照実験を出来るだけのパラメータ情報がなければ鼻で笑っていてもよいのですが…
結果は客観的に
「こっちの方が良く凍っているように見えた」などどいう結果は結果ではありません。一番いいのは液体の状態がなくなった瞬間までの時間を計ることでしょうけれども、中が見えないと難しいですよね。明確に差があればよいのですが、差があるかな、どうかな、みたいなときに、自分が望む方向での報告を安直にしないようにしたいものです。
まだまだ色々あると思いますが
科学的に実験をするということは、客観的な判断が可能な条件設定・結果報告をするということですね。良く言われる「追試可能性」というのが重要なのです。また、パラメータをきちんと整えている実験は好意的に見られることもあると思います。
まあ、所詮文系実験屋(大学時代)の戯言なので、日頃実験を行っているプロの方にアドバイスしてもらう方が良いですね。でも最低このくらいのことを考えつつ、出来る範囲でしっかりやる、というのが大事だと思います。