報道とWeb、ノンフィクションとフィクション

いまさらながら、報道はダメだとかなんとかいいながら結局のところ一次ソースは報道にしかない中で、予断で記事を書くのってリスクはあるよねーと思ってしまった話。

実体のない障害者団体に、郵便料金割引制度の適用を認める偽証明書を作成したとして、虚偽有印公文書作成・同行使罪に問われた厚生労働省元局長、村木厚子被告(54)=起訴休職中=に対する判決が10日午後、大阪地裁であった。

http://mainichi.jp/photo/archive/news/2010/09/10/20100910k0000e040062000c.html

事件当時の反応のなかで、こんなことが書かれていた。

今回の件、動機がよくわからないと報道されてるようですけど、動機なんてあまりにも当たり前で説明する必要もないほどです。民間でも同じでしょうが、中央官庁でも一定のレベルから上になれば、大事なのは「政治力」です。実務処理能力とか、知識や専門性とか、そういうので評価されるのは若い間だけ。

http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20090616

告白記事風のフィクションではあるけれども、事件の背景を断言してみせる。しかしながら、当然報道されていることが真実とは限らない。特に初動の状態では。突っ込みも入っていた。

あのさ、村木局長本人は、まだ単なる容疑者に過ぎないんだよ? 検察と正面切って対決して、否認を続けてるんだよ? 真相はまだ全然明らかじゃないんだよ? 

事実無根だったらどうするのさ? このエントリ取り下げてきちんと謝るの?

これはひどい - shinichiroinaba's blog

今年の頭には大分情勢が変わる。

ただ事件の直接の関係者が全員、証言を変えたとなると、彼女のこの罪状への関与を検察側が何をもって証明するのか、極めて疑問になってきます。同時にちきりんの前エントリについても、虚構(事実とは異なるストーリー)に基づいたものとなり、いくら“おちゃらけブログ”と言っても、ちょっとこれは問題であったと考えるに至りました。

別のエントリでは「警察、検察がすぐ犯罪人をでっちあげる」と書いておきながら、自分が警察、検察側の誘導ストーリーに基づいてエントリを書いていては話になりません。

http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20100128

ご本人も言及しているとおりだけど、こういう場合、報道機関だって実際には一次ソースではなくて、二次ソースなんだよね。
案の定だけど、ブクマでは当初はストーリーの完成度が結構ウケている。でも、判決を受けて非難されはじめる。
はてなブックマーク - Chikirinの日記

冤罪まで含めて考えると、世の中の事件について事実と断定して書くことは難しくなってしまうし、人の内面なんてそもそもしゃべっていることと一致しているかどうかも怪しいわけで。とはいえ、そんなことまで言っていると何も書けなくなっちゃうよね。え、そもそも書く必要あるのかって?ごもっとも。
事件や社会について論評を加えていくことってある程度自己満足でしかないよね。人をむやみに傷つける結果にならないようにはしたいものです。